鈴ヶ沢の野菜たち
by 南信州おひとよし倶楽部
長い間、山里の暮らしに寄り添ってきた在来の野菜たち。もちもちしたナスの食感、瑞々しいウリ、辛さの限界を知る唐辛子に出会うとき、野菜本来の味と「自然を食べること」の素晴らしさが実感できます。
鈴ヶ沢なす
【平成20年 信州の伝統野菜認定】
「500mlのペットボトルよりもまだ大きい!」
長さ約25cm、重さ350g~450gの大型のなすです。灰汁が少なく、強い甘みともちもちした食感が特徴です。標高900mの寒暖差の激しい高地で栽培されるため、実がギュッと締まっています。
≪収穫時期:8月上旬~10月上旬≫
食べ方
「焼きなす」
伝統的な食べ方です。その昔、山仕事へ行くときに、なすを1本腰にぶら下げ、山の中で火を焚いて焼いて食べたと言われています。
「なすフライ」
衣はサクサク、なすはモチモチ。衣に少し塩気を加えて食べると、なすの甘みに驚きます。なす嫌いの子どもにも喜ばれるおススメの食べ方です。
その他、冬の保存食としての「なすの粕漬け」や「なすの味噌煮」は山里の味そのものです。
鈴ヶ沢うり
【平成21年 信州の伝統野菜認定】
「普通のきゅうりの3本分!」
長さ約20㎝、重さ400~500gの太短いうりです。断面が三角形をしており、果肉は厚く瑞々しいのが特徴です。煮食で食べられていた歴史もあります。
≪収穫時期:7月下旬~9月上旬≫
食べ方
「煮て食べる!」
地元のおばあさん方に「どうやって食べる?」と聞くと、一言目には「塩を振って、そのままかじる。水分補給に。」と。そして、二言目には「味噌汁の具」と。肉厚なので、火を通す調理法にも適します。
一般的なきゅうりと同様に、冷やしてサラダやスティック、また、酢の物や浅漬け、粕もみ、ピクルスなどにも、幅広くお使いいただけます。
鈴ヶ沢南蛮
【平成26年 信州の伝統野菜選定】
「激辛!!でも、旨みもある!」
青南蛮は究極の辛味を持つが、加熱することにより旨みが加わり、絶妙の味覚となります。赤南蛮が「魔除け」として山村の暮らしに不可欠であったことが、種の継承された一要因と言われています。
≪収穫時期:青南蛮8月中旬~、赤南蛮9月下旬~11月上旬≫
食べ方
「南蛮味噌」
細かく刻んだ青南蛮を味噌に混ぜるだけ。白いご飯に乗せたり、野菜スティックに最適です。
辛いのが苦手な人は、唐辛子を半割りした後、種とワタを取り除いてください。
赤南蛮は、炒めものやお漬物の隠し味にどうぞ。
※素手で刻んだり、ちぎったりすると、辛味成分が指先に残ります。(水洗いしても取れません。)その指で鼻や目を擦ると、ヒリヒリと痛みがしばらく続きます。調理の際には十分にお気をつけください。
伝統野菜の里「鈴ヶ沢」は「食と心」のふるさとです
三遠南信の県境には、限界集落とまで呼ばれた山里が数多く在りますが、「鈴ヶ沢」もその一つです。町の中心から20キロ平谷村境の標高900mの山間にある住家はその数5戸10名にも満たない人たちが支え合って元気に暮らしています。
夏、どの家々にも畑には一軒の家で「どうしてこんなに・・・」と驚くほどだくさんのナスやウリの苗を植えてきました。それは、ここでしか採れない珍しい野菜を、時たま訪れる人に、「おすそわけする」ことを無上の喜びとしているからです。そればかりではなく、塩漬けにするのも、様々な料理に使って厳しく長い冬に備えるための知恵として、父祖の代からずっと受け継がれてきたものです。
食の安心・安全が叫ばれて久しいですが、私たちは、奥深い山里の人々の暮らしとそれに長い間寄り添ってきた在来の野菜から、豊かさと引き換えにどこかに置き忘れてきた「ふるさとのこころ」と「食べることの根源」を教えられる思いがします。
体験イベントも開催しています。
「鈴ヶ沢の伝統野菜に寄り添ってみませんか」全4回シリーズ
・第1回「鈴ヶ沢南蛮を植えよう」
・第2回「鈴ヶ沢なすを収穫しよう」
・第3回「鈴ヶ沢の野菜を味わおう」
・第4回「鈴ヶ沢の野菜サンクスギビング」